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かっこいい生き方

 あなたにとって「かっこいい生き方」とはどんな生き方ですか。身近にいる「かっこいい生き方」をしている人は誰ですか。どんな生き方がしたいとあなたは思いますか。

シゴトとヒトの間を考える 01―シゴトヒトフォーラム2012 (シゴトヒト文庫)

シゴトとヒトの間を考える 01―シゴトヒトフォーラム2012 (シゴトヒト文庫)

 

 この本には9名のかっこいい人たちが出てきます。その中から今回は3名のエピソードを紹介します。

カンボジアで暮らす女性

 この女性は、カンボジアが好きで、日本の企業に就職が決まっていたにも関わらず、カンボジアから仕事のオファーがあった途端、カンボジアに行くことを即決しました。仕事のオファーと言っても、「今まで誰もやっていない仕事だから、給料が出るかわからない」と言われたにも関わらず、即答で「それ絶対やります!」と言い、日本の企業に断りの電話をしたと。

 最高にクールだなと思ったのには理由があります。まず、彼女はじぶんにとって大事なものをじぶんで分かっていたということ。それには大好きなカンボジアとの対照として、ヨーロッパに行ったときの感覚、とても美しいけど自分がそこにいることが想像できないと感じたことがあったからこそなんだろうと思います。いろんなものを見て回ったからこそじぶんの好きなもの、じぶんに合うものを見つけられたんだろうなあ。そしてそれに人生をかけることはお金よりも尊いと知っていたこと。その上でじぶんの感覚を信じて行動に移したこと。これは誰にでもできることではありません。たいていの人は日本的な考え方や慣習にとらわれてしまってなかなかそこから自由になることができない。彼女自身、こう言っています。

日本社会の中にいたときは、ここから先にいったらドロップアウト、みたいな柵がたくさんあった気がするんですよね。その柵を越えないように必死だったと思うんです。でも、カンボジアで生活していると、それは日本的な考え方だなって気づく。(中略)

場所が変われば、価値観は当たり前に変わっていくし、良いこと、悪いことは他人には決められない。そう考えていくと社会はカオスになるんですけど、その中で、自分が信じているものとか、大事にしたいものとかを、つなぎ合わせていくような生き方を思います。

彼女のスケールはおそらく日本よりも大きく、そして彼女の「好き」は理屈を超えるものだったんだろうなと私は思います。

ベトナムで暮らす男性

しょーもないなりに、できることはないかなという気持ちもあって。仕事ができないからクビになった自分が、さらに仕事ができないベトナムで仕事をつくれたら、それっておもしろいんじゃないかと思ったんですよね。

 この男性は新卒で入社した会社をおそらくリーマンショックの影響でリストラされます。その後、すぐにでも転職活動をすべきだったと思うけど、それは絶対にやめようと思っていたと。なぜなら、その道を選んでしまうと、同じことのくり返しになってしまうからだと。これは誰にでも決断できることではないと私は思います。多くの人は、同じことのくり返しになってしまうとは薄々気づいてはいても、忙しさの中にじぶんをごまかしたり経済的な理由のせいにして見て見ぬふりをすることが多いのではないのでしょうか。だけど彼はそれだけはしなかった。

 それは彼には根拠のない自信があったからじゃないかと私は思います。あるいは自信というよりは、自分はリストラされるような「しょーもないヤツ」だけど、生き方はひとつではない、何かやったるぞ、という決意だったかもしれません。それは彼がリストラと言う結果には終わったものの、一所懸命生きてきたからにほかならないでしょう。

 そして何より彼がかっこいいのは、「それっておもしろいんじゃないかと思った」と言っているところです。こんな風に発想の転換ができて自分に起きた事態をおもしろがれる人は強いなと私は思います。だからこそじぶんにとってのチャンスがめぐってきたときにそのチャンスを掴めたのだろうなと思うのです。

自分の年齢より半分の年齢の若者に教えを乞う50代

自分よりふた回り以上下の年齢の若者を「師匠」と呼び謙虚に教えを乞える方はどのくらいいるでしょうか。この男性は「師匠」との出会いをこう語ります。

彼の話を聞いた瞬間にもう、自分の価値観を180度変えるしかないな、生き方を変えよう、と思いました。(中略)この人が師匠だ!と決めて、彼のいくところには全部ついていくことにしたんです。

年齢が上だというだけで若い人に対して偉そうに振舞ってしまう人は日本にはたくさんいる気がします。私にもそういう部分があるかもしれません。彼は年齢というフィルターを通してその人を見るのでなく、相手がどういう人間なのという見方をしていたからこそ、師匠と呼べる人に出会えたのだと私は思います。

 

 

いかがでしたか。あなたが「かっこいい」と感じるポイントはありましたか。それともじぶんにとっての「かっこいい」は少し違うと思われたでしょうか。

この『シゴトとヒトの間を考える シゴトヒトフォーラム2012』は、豊かでかっこいい生き方をしている方たちがどんな風に考えてどのような経緯でどんな仕事をしているのか垣間見ることができます。彼らがどのように生きてどんなことを目指しているのか、それに触れるだけでも、私たちの人生が少し変わるかもしれません。